株式会社ジーティーオノエ

調質ボルト 新鋼種SWCH 10AM・10CR

10CR調質特性試験

熱処理条件

a) 焼入れ:870℃*60分→油冷、 焼戻し:200~400℃*60分→空冷 b) 焼入れ:870℃*60分→水冷、 焼戻し:200、300℃*60分→空冷

各強度区分の限界サイズ

サイズ 油冷 水冷
焼戻し:300℃ 焼戻し:200℃ 焼戻し:300℃ 焼戻し:200℃
8.8 9.8 10.9 8.8 9.8 10.9 8.8 9.8 10.9 8.8 9.8 10.9
φ10
φ12
φ14 × ×
φ16 × × × ×
○:クリア ×:未達  △:注意

機械的性質

(M6×50) 10CR 強度区分 10.9
特性値項目 JIS規格 メッキ付
No1 No2 No3 No4 No5 No6




引張破断荷重
20,900 22,700 22,400 22,540 22,460 22,480 22,460
引張強さ
N/m㎡
1,041 1,129 1,114 1,121 1,117 1,118 1,117
耐 力
N/m㎡
940 1,072 1,067 1,068 1,065 1,063 1,074
テスト・ピース
破断伸び
9.00 14.04 13.93 13.50 14.66 13.90 13.60
硬さ
HRc
32~36 34~35

10CR-調質衝撃特性

試験方法

加工工程
中116BT→熱間鋳造(φ32)、ノルマ→衝撃・硬さ試験片加工(注1)→QT(注2)→特性調査(注3)
注1: (1)6mm幅*11mm高さ*55mm長さ (2)φ6、φ8mm*20mm厚み
注2: 870℃*50分→WQ、200~400℃*60分→WC
注3: (1)衝撃試験片:5mm幅*10mm高さ*55mm長さ、Uノッチ(2mm深さ)に仕上げ後、衝撃試験
(2)硬さ測定:φ6、φ8mm*10mm厚み、Hv測定→HRc換算

結果

図1:衝撃特性(SCM440は文献データ)

鋼種 C Si Mn Cr Mo B
S35C 0.35 0.25 0.74 - - -
SCM435 0.36 0.24 0.73 1.04 0.20 -
15B23C7 0.23 0.24 0.95 0.85 - 0.0021


図2:Tと衝撃値の関係
低温焼戻しでも非常に高いじん性を示しているのがこの材料の特性である。

酸浸漬による遅れ破壊比較試験

(1)試料

10CR材   M6×30 n=5
SCM435材  M6×30 n=5

(2)試験内容

ホンダ向けボルト遅れ破壊試験方法に則って試験を行った。
  • 1、締付け条件
    • ・締付け試験にて破断トルクを確認。(n=5での最小値)
    • ・締め付けトルク=破断トルク(n=5での最小値)×0.8
  • 2、浸漬条件
    • ・0.1N塩酸(水道水1000cc+濃塩酸(35%保証)9ccの割合)に浸漬
    • ・翌日、浸漬液を新品に交換
    • ・以後、2~3日毎に浸漬液を交換
    • ・200Hr時点にて、締付けトルクの半分程度のトルクで増締めを行い、ボルト破断の有無を確認する
  • 3、判定(規格)
    • ・200Hr以内にボルトの破断なきこと。(浸漬液交換毎に確認)
    • ・200Hr後に行う増締めで破断なきこと

(3)試験条件

破壊トルク試験を実施(n=5)、各試料の最小値から締付けトルク及び200Hr後の増締めトルクを算出した。
材質 サイズ 破断トルク(最小値)×0.8=締付けトルク 200Hr後の増締めトルク
10CR M6×30 34.2N・m×0.8=27.4N・m 27.4÷2=13.7N・m
SCM435 M6×30 31.4N・m×0.8=25.1N・m 25.1÷2=12.6N・m
※小数点以下2桁目はJIS Z8401数値の丸め方によって丸めた値とする。

(4)試験日程

下記の日程にて試験を実施した。
月  日 内容 経過時間 内容実施時間
3月22日
23日
24日
25日
26日
27日
28日
29日
30日
31日
(浸漬開始)
(浸漬液交換)

(浸漬液交換)


(浸漬液交換)

(浸漬液交換)
(浸漬終了)
0時間
24
48
72
96
120
144
168
192
210
(PM 6:00)
(PM 6:00)

(PM 6:00)


(PM 6:00)

(PM 6:00)
(AM 10:00)

(5)経過写真

浸漬液交換時に試料の様子を確認(25日目以降)
SCM435材
3日目(3月25日)
10CR材
 
どちらの材料にも、外観的に差異は確認できない。 両試料ともに破断はなし。

6日目(3月28日)
 
SCM435材が10CRより、若干ツバ部の痩せが確認できる。
両試料ともに破断はなし

8日目(3月30日)
 
SCM435材が10CRより、明らかにツバ部が痩せており、ねじ部に関しては若干の痩せが確認できる。
両試料ともに破断はなし。

9日目(3月31日)
 
SCM435材が10CRより、明らかにツバ部及び、ねじ部が痩せていることが確認できる。
両試料ともに破断はなし。

(6)試験結果

今回の遅れ破壊試験では、どちらの試料も試験条件を満足しており、特に問題はないと判断致します。
ただ、比較試験という観点から判断いたしますと、下写真からも確認出来ますように、10CR材はSCM435材よりも腐食率が低く、また、増締め試験においても、10CR材は締め勝手が良く、その後の戻しトルクもSCM435材は8~10N・mに対し、10CR材は18~20N・mと、増締めが十分にかかっており、塩酸による耐腐食性はSCM435材よりも10CR材の方が優れていると判断できます。

(※)試験後の外観写真


今回の試験は、開始時間の関係より200時間以上(実質210時間)の試験となりましたが、同条件での試験であるため、比較試験としては、問題ないと判断致します。